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パラメータ特許の記載要件について

パラメータ特許に限らず、特許を受けるためには記載要件をクリアしていることが必要です。記載要件は、一般的に、(1)クレームの記載要件、(2)明細書の記載要件に分けることができ、クレームについては、(1.1)サポート要件、(1.2)クレーム発明の明確性、(1.3)簡潔性、(1.4)その他形式的な要件に分けられ、明細書については、(2.1)実施可能要件、(2.2)その他形式的な要件に分けられます。

(1.1)サポート要件については
−近年、厳しく審査される傾向にあるので要注意−

出願当時の技術水準を考慮して、クレームの全範囲にまで発明が一般化できる程度にまで明細書に裏づけデータを要します。ここで陥りがちな落とし穴として、実施例においてパラメータの値を種々とったデータを載せているものの、着目するパラメータ以外の構成要件の一般化について検討がされていない例がよくあります。この場合、着目するパラメータ以外の構成要件をクレーム範囲内で変動させたときに、パラメータの数値限定が無意味になってしまうことが懸念されます。

別の落とし穴として、請求項で規定する数値範囲内のデータがあまりに少ない場合が挙げられます。通常はデータが足りないと気付くので出願前にデータを補充するなどで対応しますが、数値範囲を外れるデータが非常に充実していて一見するとパラメータの数値範囲に意味があるかのように錯覚されるかたもいます。確かに、クレーム範囲外においてよい効果が得られないことはクレームで規定する範囲を引き立てます。しかし、クレームで規定する発明をサポートするのは、あくまでも、クレーム範囲内のデータですから、クレーム範囲外のデータの充実に目を奪われないことが肝要です。

さらに別の観点からみると、クレーム範囲内に発明の効果を奏さない実験例(比較例)を一つでも記載してはいけません。そのようなことをすれば、みずから、クレームで表現した範囲内で発明の効果を奏さないことを認めることになってしまいます。

(1.2)クレーム発明の明確性
−権利範囲の明確性と技術思想の明確性−

一つは、権利範囲が明確であること。つまり、具体的なモノを想定したときに、それが権利範囲に属するか否かを判定する基準として明確に機能しているかどうかという点です。
例えば、パラメータの測定方法がいくつかあるときには、測定方法を明示する必要が高いです。測定法によって数値の大小が左右されてしまうようとすると、同じモノであっても測定法によって権利範囲に属したり属さなかったりすることになり、権利範囲が明確であるとは言えないからです。
また、パラメータが複雑な表現である場合には、どのようなものが権利範囲に属するのか直感的に分かりにくい場合も多々あります。いわゆる「特殊パラメータ」で記述されるクレームに多いです。審査基準によれば、特殊パラメータでクレームを記述する場合には、従来技術のものが、パラメータの数値範囲に入らず、発明の効果を奏さないことをなるべく多くのデータで示す必要があります。

クレームの明確性として重要なもう一つの観点は、技術思想として明確であることです。
パラメータによる記述が許容されるといっても、意味不明な実験式を説明無くクレームとして表現すると、技術的に意味不明であってクレーム発明が不明確であると認定されることがあります。経験式でクレームを表現する場合にも多少の説明が必要です。

(1.3)クレームの簡潔性 &
(1.4)委任省令要件

これらの要件は、パラメータ特許に限らず、全ての特許出願で留意したい要件です。
クレームは簡潔に表現し、方式的なルールに従って記述する必要があります。

(2.1)明細書の実施可能要件 &(2.2)明細書の形式的要件
−「how to make」と「how to use」− 

実施可能要件については、当業者に過度の試行錯誤を強いることなく、クレームのものを作ることができ(how to make)、使用することができる(how to use)ような記載が必要です。これらの要件は、パラメータ特許に限らず、全ての特許出願で要求されます。

特に、化学・材料系の発明では、公知物から出発して、クレームのものを作ることができるように記載されているかに留意が必要です。日頃、社内で合成した中間体を使って実験していると、つい、公知ではない材料から出発して発明を開示するという失敗に陥りやすいのです。

また、化学や材料関係の特許に書きなれていない方が「材質に特徴のある」構造物の発明の明細書を作成すると、材料の記載が不十分になることがあります。

パラメータ発明では、対象とするパラメータの数値を制御する方法も記載しておくべきです。パラメーター発明では、数値限定の対象となるパラメータは制御因子であるという建前にしていることが多いと思います。そのような制御因子を制御する手段の記載が無いことは、当業者に過度の試行錯誤を強いていると認定されるおそれがあります。

パラメーター特許

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